居合の稽古をはじめたころ、ある先輩の夢想神伝流「初発刀」と全剣連居合「前」の膝送りがほかの人と違い,なにか動きが多いと感じたことが記憶に残っています。今思うと、その先輩は膝頭で床をこすらずに爪立てた足先で膝送りをしていたんですね。
そのことに気づいたのは中山博道範士の演武映像を観てのことで、中山範士は膝をわずかに床から離して爪立てた足先で膝送りをしている。爪立てた足先で膝送りをすると、足先がそのまま移動しますので腰から下はすでに切り下ろし態勢が整っている。したがって、振りかぶり切り下ろしに余計な間が入らず、足先できちんと踏ん張れるので腰の力もしっかり切り下ろしにのってきます。
夢想神伝流、全剣連居合の演武をYouTubeに載せている方が多くおられますが、映像から判断する限り、ほとんどの方の膝送りは膝で床をこすっている。膝で膝送りをすると大方の人は爪立てた足先が一旦浮いて伸び、膝送りがすんだところで爪立てし直す。ですが、しっかり爪立てし直せるとはかぎりません。膝に意識が向いていれば、爪立てがおろそかになり後ろ足から踏ん張る力が抜けるおそれがあります。
どちらが膝送りの技として望ましいのか。中山博道範士がなぜ膝頭を浮かして膝送りしていたか研究する必要がありそうです。
青玄子